蓄電池とは?|住宅で用いる蓄電池や太陽光との連携の仕組みも紹介

  • エネルギー機器
公開日:2024-03-08
更新日:2024-04-01

蓄電池とは、住宅に設置した太陽光発電システムでつくった電気や、電力会社から購入した電気をためておくための装置です。電気代の節約につながるだけでなく、災害時の備えとしても活用できるので注目されています。

この記事では、家庭用蓄電池の種類や得られる効果、活用できる補助金制度などのポイントを解説します。

1. 蓄電池とは?

ねぇ、蓄電池を使ったほうが電気代が安いって、知ってた?

いや、知らなかった。誰に聞いたの?

ジムに通っている友だちに聞いたの。蓄電池って電気をためるとができるみたい。

ふーん、そうなんだ。ちょっと仕組みに興味があるから、一緒に詳しく調べてみよう。

蓄電池とは、電気を蓄える機能を備えた電池のことであり、充電することによって何度でも使用できるのが特徴です。蓄電池はEV(電気自動車)やスマートフォンのバッテリーなど生活に身近なところで使われていますが、住宅においても蓄電池を活用できます。

蓄電池には家庭用と産業用の2つのタイプがあります。家庭用蓄電池は、住宅の屋根などに設置した太陽光発電システムでつくった電気や、電力会社から購入した電気をためておくためのものです。

地震や台風といった災害発生時の停電に備えるために非常用電源として活用できるほか、エネルギー収支のバランスを考慮したゼロエネルギー住宅の実現のために活用できます。家庭用蓄電池はコンパクトな設計のものが多く、ある程度のスペースがあれば設置可能です。

一方、産業用蓄電池はオフィスや工場、商業施設などに設置されるものであり、家庭用蓄電池と比較するとサイズが大きいのが特徴です。

蓄電池の寿命や充電できるサイクル数などはメーカーや製品によって異なりますが、家庭用蓄電池であれば寿命は15年程度、サイクル数は5,000~1万5,000回程度が目安です。産業用蓄電池は家庭用のものより容量が大きいので、その分だけ寿命やサイクル数は長くなる傾向が見られます。

2. 家庭用蓄電池の4つの種類

家庭用蓄電池にはおもに、「単機能型」「ハイブリッド型」「多機能型」「スタンドアロン型」の4種類があります。それぞれどのような特徴を備えているのかを解説します。

単機能型

単機能型の蓄電池は、パワーコンディショナー(直流電力を家庭内で使えるように交流電力に変換する装置)が蓄電池のみに作用するのが特徴です。蓄電池と太陽光発電システムを併用する際、単機能型であればそれぞれが独立したシステムとして構成されるため、太陽光発電システムにもパワーコンディショナーが必要になります。

単機能型の良い点は、蓄電池のメーカーと太陽光発電システムのメーカーが違う場合でも設置が行えることです。太陽光発電システムを先に導入し、後から蓄電池を設置する場合などに単機能型が選ばれることが多いといえます。

一方、単機能型だと太陽光発電システムによってつくった電気を蓄電池にためるときに、パワーコンディショナーを2回経由しなければなりません。そのため、電気を変換するときのロスが大きくなるデメリットが生じます。

また、パワーコンディショナーを2台設置しなければならないため、住宅のスペースによっては設置が難しい場合もあるでしょう。

ハイブリッド型

ハイブリッド型の蓄電池は単機能型とは異なり、1台のパワーコンディショナーで蓄電池と太陽光発電システムの両方を動かせるのが特徴です。パワーコンディショナーの設置が1台で済むため、電気の変換ロスを抑えられるのがメリットです。

太陽光発電システムでつくった電気を直流電力のまま蓄電池にためられるので、効率良く電気を使いたい方におすすめの仕組みです。一方、デメリットは単機能型と比べて導入コストが割高になりやすい点です。

また、すでに太陽光発電システムを設置している住宅に後から蓄電池を導入する際、ハイブリッド型が設置できないこともあるので注意が必要です。事前に設置が可能かどうかをメーカーに確認しておきましょう。

多機能型

多機能型の蓄電池とは、蓄電池・太陽光発電システム・V2H(EVなどのバッテリーでためた電気を家庭用に使えるようにする機器)をパワーコンディショナー1台で制御できる仕組みを指します。トライブリッド型と呼ばれることもあり、全ての設備を直流電力でつなげるため、電気の変換ロスを抑えられるのが特徴です。

多機能型は電気の自家消費を最大化できるため、電気代の節約につなげられます。AIによって住宅全体の電気の使い方をコントロールするスマートハウス化にも役立つ仕組みだといえるでしょう。

スタンドアロン型

スタンドアロン型とは、電力会社の系統に接続せず、大がかりな設置工事を必要としません。おもに屋内で使用されることや、アウトドアなどで使用されるポータブル蓄電池よりも容量が大きいのが特徴です。

しかし、単機能型や多機能型と比べると充電できる容量に限りがあるので、大容量の電気を使うケースでは向いていません。スタンドアロン型は家庭用のコンセントにつないで充電するため、マンションなどの集合住宅でも手軽に導入できます。

蓄電池本体に付属しているコンセントを家電製品などに直接つないで使用します。

3. 太陽光発電と蓄電池の連携の仕組み

蓄電池と太陽光発電システムを併用すれば、太陽光で発電した電気を蓄電池にためておけます。住宅の屋根などに設置した太陽光パネル(太陽電池モジュール)に太陽光が当たることで、光エネルギーから電気をつくり出します。

ただし、太陽光パネルでつくった電気は直流であるため、パワーコンディショナーを通じて家庭で使用できる交流電力に変換する必要があります。蓄電池を設置している場合は、直流のまま蓄電できるので変換ロスを減らせるでしょう。

そして、分電盤を通じてそれぞれの部屋や家電製品などに電気を振り分けます。蓄電池を使用している場合は、分電盤を通さずにパワーコンディショナーから直接電気をためる方法もあります。

蓄電池にためた電気は、必要なときにいつでも使えます。夜間や災害時などに蓄電池を活用することで、電気を無駄なく自家消費できるはずです。

太陽光発電システムと蓄電池を併用することで、ご家庭で使用する電気を効率良くまかなえるでしょう。

太陽光発電システムを導入すれば、蓄電池の機能を最大限に活かすことにつながり、電気代の節約や災害時の備えとして役立てられるでしょう。蓄電池にはいくつか種類があるため、太陽光発電システムを設置した後でも導入可能です。太陽光発電システムについて、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

太陽光発電の仕組み|導入のメリットと注意点を紹介

4. 蓄電池の設置で得られる効果は?

住宅に蓄電池を設置することの効果として、以下の点が挙げられます。

  • 災害時の電源として使える
  • 電気代の節約につながる
  • エコに貢献できる

それぞれのポイントについて解説します。

災害時の電源として使える

蓄電池はあらかじめ充電しておいた電気をいざというときに使用できるのが大きな特徴です。平時から蓄電池に電気をためておけば、地震や台風といった災害時に非常用電源として活用できるでしょう。

蓄電池の容量にもよりますが、一般的な家庭用蓄電池であれば、生活に必要な電気を1~3日程度はまかなうことができます。停電時においても、照明やエアコン、スマートフォンの充電などに使用できるので、災害時にも日常生活を保ちやすくなります。

電気代の節約につながる

太陽光発電システムによって日中に電気を蓄えたり、電気料金が割安な時間帯に電気を蓄電池にためたりしておけば、電気代の節約につながります。電気料金が割高な時間帯であっても、通常より安い価格で電気が使えるのでおトクです。

日中に発電した電気を蓄電池にためておけば、電力会社から購入する電気を減らすことができます。毎月の電気の使用量などを踏まえたうえで、電気代を節約する方法の一つとして蓄電池の設置を検討してみましょう。

EVを保有している場合、EVのバッテリーを蓄電池のように使うことも可能です。「車から家へ」を意味するV2Hという言葉は、EVに蓄えた電気を家庭用の電気として活用することを指します。太陽光発電システムと併用するなら、つくった電気をEVにもためられるので、住宅や車の使用で必要な電気をうまくまかなえるはずです。

エコに貢献できる

電気は性質上、つくったらすぐに使わないといけないエネルギーという課題がありました。しかし、蓄電池の登場によって発電した電気を一時的にためられるようになり、使わないまま放出される電気を減らすことが可能になりました。

住宅に蓄電池を導入すれば、無駄な電気を生み出さずエコに貢献できるため、環境負荷の軽減にもつなげられます。

蓄電池を使うと、たしかに電気代が安くなりそうだね。

災害のときの備えにもなるから、いいかもね。

電気自動車とかにも使えるやつがあるのかな?

車にも充電できるなら、さらにお得だね。

5. 蓄電池の導入に活用できる補助金には何があるの?

蓄電池の導入を検討する際は、費用負担を軽減するために各自治体が設けている補助金制度を活用してみましょう。ここでは、埼玉県と神奈川県の補助金制度について紹介します。

埼玉県:家庭における省エネ・再エネ活用設備導入補助金

埼玉県が実施している「家庭における省エネ・再エネ活用設備導入補助金」は、マイホームで新たに省エネ・再エネ活用設備を導入した際に補助金が交付される仕組みです。補助の対象設備として、蓄電池のほかにV2Hやエネファーム(家庭用燃料電池システム)が該当し、1件あたり10万円の補助が受けられます。

補助を申請するには、埼玉県省エネ・再エネ活用設備あんしん事業者の認定を受けている事業者と契約したうえで、補助対象設備を導入することが要件です。交付決定を受けてから工事に着手する必要があるので、補助金を申請するときは施工会社にあらかじめ相談をしてみましょう。

出典:埼玉県「【令和5年度】家庭における省エネ・再エネ活用設備導入補助金」

神奈川県藤沢市:定置用リチウムイオン蓄電池設置費補助金

神奈川県藤沢市では、住宅に定置用リチウムイオン蓄電池を設置する際に、費用の一部を補助する制度を設けています。1件あたりの補助額は5万円であり、交付決定後に工事を行います。

また、市内の事業者を使用することが要件となっているので、補助金を活用したい場合は早めに相談してみましょう。

出典:神奈川県藤沢市「定置用リチウムイオン蓄電池設置費補助金」

6. 蓄電池を導入する際の注意点は?

蓄電池で使用されるリチウムイオン電池は、充放電サイクル数に上限が設けられているため、無限に使用できるわけではありません。メーカーや製品などによって蓄電池の寿命は違いますが、どの程度の期間使えるのかを購入前にチェックしておくことが大切です。

また、万が一の不具合などに備え、保証期間なども併せて確認しておきましょう。蓄電池の設置にはそれなりに導入コストやランニングコストがかかりますが、電気代の節約や災害時の非常用電源として活用できる点なども踏まえて、トータルで検討していくことが大事です。

自治体によっては蓄電池を設置するための補助金制度などを設けているところもあるので、購入時に申請できるものがないかを確認しておきましょう。

7. まとめ:災害時の備えや電気代の節約に蓄電池を活用してみよう

蓄電池は電気をためたり、必要なときに電気を使えたりする設備のことです。繰り返し使用できるのでエコですし、災害時の備えとしても活用できます。

太陽光発電システムと併用すれば、電気代の節約にもつながり、電気の自家消費を最大化できるでしょう。一方で、導入のためにはコストがかかるので、自治体が設けている補助金制度なども活用しながらトータルで検討していくことが大切です。

蓄電池の種類なども踏まえながら、どのタイプの蓄電池が自宅に適しているかをさらに詳しく調べてみましょう。

蓄電池があれば、停電の際に非常用電源として役立てられますし、太陽光発電システムと組み合わせれば、ご家庭で電気を「つくる・ためる・使う」仕組みを整えられます。
ニチガスでは、トライブリッド蓄電システムをご提供しております。

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