スマートグリッドとは?|活用技術の仕組みや事例を紹介
- エネルギーの基礎知識
スマートグリッドとは、ICT技術を活用し発電所と家庭・企業などの電力需給を自動でコントロールし、電力を効率良く配分する仕組みのことを言います。太陽光発電などの再生可能エネルギーは悪天候時の発電量に不安があります。
一方、電力需要が少ないときに多くの電力を供給すると、配電線に負荷がかかり電気の質が不安定になるという点も課題です。そのため、電力の需給バランスを安定化させる仕組みが不可欠です。
この記事では、スマートグリッドの基本的な仕組みやメリット、導入事例などを解説します。
目次
1.スマートグリッドとは?仕組みを分かりやすく解説
「スマートグリッド」って言葉、聞いたことある?
うーん、たしか雑誌で見かけたような……電気に関することだっけ?
そう、たしか電気のことだったと思うよ。でも、私も詳しくは分からないんだよね
ちょっとスマートグリッドって何か気になってきたから、これから調べてみようか。
スマートグリッドとは、電力ネットワークにICT技術を組み合わせた次世代型のエネルギーシステムを指します。グリッドとは送配電網を意味しており、スマートグリッドは一方的に電力を供給する従来型の電力設備とは異なります。
ICT技術により供給側の発電所と需要側の家庭や企業などをネットワークでつなぎ、電力量をバランス良く調整し安定的な電力使用を促進するのが特徴です。具体的には、スマートメーターを家庭や企業に設置することで、電力の使用量や発電量、売電量などをリアルタイムで自動計測し、「電力の見える化」を実現します。
スマートメーターにより見える化されたデータは、「HEMS(Home Energy Management System:ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)」というエネルギーを管理するシステムに送られます。こうした仕組みにより、電力需要のピークをあらかじめ予想し蓄電池にためた電力を活用したり、余った電力を蓄電に回したりすることがスムーズに行えるようになるのです。
太陽光発電システムを導入すれば、ご家庭で使用する電力をまかなうことにつながり、光熱費の削減や災害時の備えとなります。再生可能エネルギーであるため、長く使い続けるほど電気代を抑えることができ、また環境への負荷を減らせるので得られるメリットは大きいでしょう。太陽光発電の仕組みについて、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
太陽光発電の仕組み|導入のメリットと注意点を紹介
蓄電池があれば、停電の際に非常用電源として役立てられますし、太陽光発電システムと組み合わせれば、ご家庭で電気を「つくる・ためる・使う」仕組みを整えられます。ニチガスでは、トライブリッド蓄電システムをご提供しております。また、ニチガスが提携している蓄電池メーカーのPowerX社では、各営業拠点に蓄電池を設置しており、営業車輛の充電などに活用しています。
Wi-FiやBluetoothなどのICT技術を製品本体に搭載し、スマートフォンで操作できる家電製品をスマート家電(IoT家電)と言います。一方で、ICT技術を搭載していない家電製品をスマート家電のように操作するには、スマートリモコンと呼ばれるデバイスが必要です。スマートホームを実現するために欠かせない機器なので、積極的に活用してみましょう。
2.スマートグリッドの市場規模
スマートグリッドの導入は、日本だけでなく世界的にも進められており、市場規模は年々増加しています。一つの要因としては、スマートシティ(ICT技術などにより、都市や地域が抱える社会課題の解決を目指す都市)の実現に向けた取り組みの一環として注目されている点が挙げられるでしょう。
スマートグリッドの世界市場は2020年には294億5000万米ドルですが、2021年から2028年にかけて年間で平均21.9%の高い成長が見込まれており、2028年には1,405億3000万米ドルになると予測されています。国内外でスマートグリッド導入のための実証実験が行われており、都市部だけでなく地方都市においても、今後はスマートグリッドの導入が進められていくことが期待されています。
出典:FORTUNE BUSINESS INSIGHTS「スマートグリッド市場規模、シェア、新型コロナウイルス感染症の影響分析、エンドユーザー別(公益事業、産業用、住宅用、商業用)、コンポーネント別(ソフトウェア、ハードウェア、サービス)、および地域予測、2021~2028年
3.スマートグリッドのメリット
ここでは、スマートグリッドが実現されることで、どのようなメリットがもたらされるのかについて見ていきましょう。
電気の「見える化」が実現できる
スマートメーターが家庭や企業に設置されることで、電気の使用状況や需要のピークを「見える化」することにつながります。スマートメーターはリアルタイムで電気の使用量を自動計測できるため、そのデータが管理システムに共有される仕組みです。
細かなデータを把握することにより、電気の使用量だけに限らず、電気の使い方や使用している時間帯まで割り出すことが可能です。そのため、高齢者の見守りサービスや空き家の状況把握といった分野においてもデータ活用が期待されています。
効率的な電力供給が行える
スマートメーターの設置によって、電気の使用状況に関する詳しい分析が行えます。電気の需要に関する精度の高い分析が実現できるため、送電時の電力ロスを減らすことにもつながります。
電力ロスが減ることで、電力の供給をより安定的に行えるほか、低価格での電力供給の実現が期待されています。
電力網の安定化につながる
スマートグリッドの実現によって、小規模な発電設備を有効に活用できる「分散型電源」の導入も検討されています。電力の供給源を分散することで、災害発生時などの非常時におけるリスクの低減化につなげられるでしょう。
大型の発電設備を中心とした「集中型電源」による電力供給は、災害時や発電所のトラブルなどにより大規模な停電が起こるリスクを抱えています。スマートグリッドの実現は、電力網の安定化に貢献するものだといえます。
4.スマートグリッドのデメリット
スマートグリッドの実現は多くのメリットを備えていますが、いくつか注意しておきたい点もあります。具体的なデメリットについて解説します。
セキュリティ対策の必要性がある
スマートグリッドの実現にはスマートメーターの設置が欠かせませんが、ICT技術を用いて電気の使用状況に関するデータの送信を行うので、情報漏えいのリスクが生じます。電気の使用状況から個人情報が特定される恐れがあり、外部からハッキングされるリスクもゼロではありません。
そのため、データの管理システムやスマートメーターに、強固なセキュリティ対策を講じる必要があります。
導入コストがかかる
スマートグリッドを実現させるには、電力会社がコストを負担して各家庭や各企業にスマートメーターを設置する必要があります。使用者にとっての負担は想定されていませんが、電力会社においては設置のための費用負担や労力などの課題が生じるため、議論が進められています。
スマートメーターの設置に伴う人件費の負担、修繕費や維持管理のためのコストが生じるので、全ての家庭や企業に設置するにはそれなりに時間がかかる部分もあるでしょう。
5.日本におけるスマートグリッドの導入事例
スマートグリッドの実現にはコストなどの面で課題を抱えていますが、脱炭素社会の実現のために世界的な動きが加速するなか、日本においても導入が進められています。ここでは、具体的な事例を基に解説します。
トヨタ スマートセンター
脱炭素社会の実現を目指すトヨタ自動車株式会社では、2010年に「トヨタ スマートセンター」を開発しました。これは、車・住宅・電気事業者・使用者をネットワーク化し、エネルギー消費を包括的にコントロールするシステムです。
具体的には、EV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド車)、HEMSなどを実装したスマートハウスを通じて、電力の需給状況を管理するものです。使用者に対しては、電気の使用量などを情報提供し、ライフスタイルに合わせた電気の使い方を提案することに役立っています。
出典:トヨタ自動車株式会社「トヨタ自動車75年史」
東京電力ホールディングス株式会社
日本の主要な電気事業者である東京電力ホールディングス株式会社では、2020年度までに管轄する域内の家庭や企業に対し、約2,840万台のスマートメーターを設置しました。スマートメーターを通じて、電力使用量を30分ごとに送信する仕組みを整えており、安定的な運用に取り組んでいます。
出典:東京電力「スマートメータープロジェクト」
スマートグリッドって、スマートメーターというのがポイントなんだね。
リアルタイムでチェックできるから、いろいろと無駄が減らせるみたいだね。
でも、セキュリティとかできちんと対策が必要みたい。
よく調べてから取り入れたいね。
6.まとめ:スマートグリッドの仕組みを理解し家庭のエコにつなげよう
スマートグリッドはICT技術などを活用することで、電気を効率的に使用する仕組みを整えていく次世代型のエネルギーシステムです。再生可能エネルギーの有効使用や脱炭素社会の実現に貢献するものであり、電力需要の把握だけでなく、高齢者の見守りサービスなどの分野においてもデータ活用が期待されています。
一方でスマートグリッドの実現には、コスト面やセキュリティ面での課題を解決する必要があるでしょう。電力の見える化や安定供給につながるなどメリットも多いため、日本においても実現に向けた動きが見られています。
スマートグリッドについてより深く学び、電力の効率的な使用方法や環境への負荷を抑えた社会の実現のためにできることを把握しておきましょう。